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34 Garbage Brave (β) _033_Trainee 1

    玄米を精米し白米にして白米を大量の水で炊く。


    白米と水の割合は一対十で水分がかなり多目なので薄粥となる。


    水分が少なめのお粥なら水の割合を減らせば良いが、サーニャはあまり食事を与えられず投獄されていたので消化不良を起こさないようにこのくらいの方が良いだろう。


    「ご主人様、ありがとうございます」


    ハンナが恭しく礼をいう。


    「礼はいいからこれを食わせてやれ。俺の故郷の料理で消化に良いから今のサーニャにはいいだろう」


    「あ、ありがとうございます」


    サーニャも俺に礼を言ってくる。


    人に礼を言われることなんて滅多になかったからこういうのは苦手なんだ。


    サーニャは五年ほど前からフーゼルに囚われていたそうだ。


    ハンナはその事実を知らなかったようで、囚われたのは最近のことだと思っていた。


    五年もあの暗くジメジメした牢屋に閉じ込められていたのだからサーニャの筋肉はかなり衰えていると思ったら、そうでもなかった。


    獣人族、特に狼系の獣人は飢餓に強く、少しの食事と水があればかなり生きることができるらしい。


    更にサーニャは牢屋に閉じ込められて暇だったから筋トレをしていたそうだ。


    だからそれほど悲観するような状態ではない。


    「外の世界のことを知らないだけで体力も精神も問題ないのかよ……」


    狼獣人、タフだわ~、それにパネェ~。


    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


    伯爵からの依頼を受けている俺はカナンを連れて訓練場に足を運んだ。


    ハンナと妹のサーニャはサイドルの息がかかった宿屋の部屋にいる。


    俺のお粥を食べたのだから体も精神も回復している。


    ただし、長い間牢屋に閉じ込められていたので寝かせておいてやろう。


    ハンナはサーニャに付き添わせている。


    姉妹の感動の対面に俺たちは邪魔だろう。


    直径百五十メートルほどの円形の訓練場では多くの騎士がおり活気があるように表面的には見える。


    訓練場をぐるりと見渡すとゴリアテが部下三人を相手に実践訓練をしていた。


    暫くゴリアテの訓練を眺めるとしよう。


    ゴリアテの得物は巨大な剣だ。


    屋敷内では普通の剣を帯剣しているが、この大剣がコイツ本来の武器なのだろう。


    剣身の長さが百五十センチメートル、最大幅が四十センチメートル、厚み五センチメートルほどのその両刃の大剣を片手でも扱うほどの馬鹿力のゴリアテ。


    ゴリアテ自身も二メートルほどの身長にゴリラの獣人だけあって筋肉モリモリで胸板は恐ろしく分厚い。


    氏名:ゴリアテ?イクサル


    ジョブ:剛腕剣士 レベル五十二


    スキル:【両手剣術】【剛腕】【破壊】【身体強化II】


    能力:体力D、魔力F、腕力C、知力F、俊敏E、器用E、幸運E


    ステータスでも容姿に負けない脳筋ぶりを発揮している。


    この『剛腕剣士』は【両手剣術】もあるがパワーを重視したスキル構成となっている。


    スキルの【身体強化】と【身体強化II】は常時発動型のパッシブスキルだからあのデカい大剣も普通に軽々扱えるのだろう。


    だから三人を相手してもその巨体を生かした体当たりで部下を吹き飛ばしたり、大剣の腹で薙ぎ払うと二人を一度に吹き飛ばす。


    三人はただ吹き飛ばされただけだが、足にきているようで剣を杖代わりに立ち上がるのがやっとの状況だ。生まれたばかりの仔馬のように足がブルブルだ。


    部下が三人がかりでもまったく相手にならない。


    フーっと息を吐いてから部下になにやら指示をして俺の方に悠然と歩いてくる。


    体がデカいので迫力がある。


    「よぉ、随分と豪快な訓練だな」


    「最近の若い者はふがいない」


    聞くとゴリアテとまともに戦える騎士はいないようだ。


    恐らく今までゴリアテとまともに剣を交えることができたのはロッテンくらいだろう。


    しかしそのロッテンはドルチェ殺害事件に加担はしていなかったが、妻が主犯格だったことで今は自宅で謹慎している。


    それに既に騎士団を辞していることから伯爵の家臣でもない。


    妻が主犯格だったのに連座して罪に問われずこの程度で収まっているのはこれまでのロッテンの忠勤ぶりが評価されてのことだろう。


    しんみりしてしまったが、俺が訓練場に赴いたのはロッテンの話をする為ではない。


    「俺が訓練するやつを見繕いにきた」


    「ああ、分かっている。その前に一つ頼みを聞いてくれないか?」


    「言ってみろ」


    「私と手合わせをして頂きたい」


    「……俺が、か?」


    「然様」


    (面白そうではないか、やってみろ)


    「構わないが、怪我をしても怒るなよ」


    「武門の誇りにかけて」


    俺が強いのは知っているが、どれほど強いのか確認したいのだろう。


    それに部下に俺の訓練を受けろと言う以上は俺が強いと部下たちに示さねばならないといったところかな?


    いや、単純に今回の事件のことやロッテンのことで溜まっている憂さを晴らしたいだけかもな。


    訓練場のほぼ中央で対峙するゴリアテと俺。


    騎士たちは俺たち二人の立ち合いを見守るために訓練場の外周へ移動して見学するようだ。


    「いつでも良いぞ」


    俺は黒霧を引き抜き右手に持ってだらりと構える。


    「おう!」


    ゴリアテも大剣を両手で持ち俺に正眼に構える。


    ヒリヒリとゴリアテの殺気が俺の頬を刺激する。


    それだけでもゴリアテが本気だと分かる。


    (殺気を抑えることができない者はまだ半人前だ)


    (お前が認めるほどの達人なんてこの世界に何人いるんだよ?)


    (伯爵家の騎士団長ならばもっと高みにあるべきだ)


    無茶を言う黒霧。だがその声は久しぶりの対人戦で嬉しそうだ。


    数十秒は睨みあったか、ゴリアテが動いた。


    一直線の剛の剣。巨体が瞬時に間合いを詰めてくるのはそれなりの迫力がある。


    一般兵ならちびっているかもしれない。


    最上段より力と重量まかせに振り下ろされる大剣が俺の体の左側を掠めるように振り下ろされる。


    地面に大きくめり込む大剣。それを力任せに抜き横薙ぎ気味に振り上げるので俺はスーッと後方に下がる。


    この間、恐らく二秒も経っていないだろう。


    再び対峙するゴリアテと俺。


    「私の渾身の一撃を顔色一つ変えずに躱すか」


    (まだまだだが、良い踏み込みだったぞ)


    「殺気を消せ。そうすればもっと良くなるぞ」


    「殺気を……消す……」


    殺気を放っていると動く時のスタートが相手に分かってしまう。


    殺気でフェイントを入れる高等技術もあるが、それは殺気を完全にコントロールしなければ始まらない。


    「人だろうと魔物だろうと上位のものは殺気に敏感だ、更に上に行きたいのであれば殺気をコントロールしろ」


    「なるほど、タメになりますな」


    そう言うとゴリアテは俺との立ち合いの最中だと言うのに目を瞑りだした。


    今ここで殺気のコントロールをするなよ、放置された俺はどうすれば良いのだ?


    数分、対峙したまま待つ。


    ちょっと前からゴリアテの殺気が消えてはいる……


    ドンと地面を踏み込みゴリアテが一足飛びに切りかかってくる。


    俺はそれを余裕をもって躱すとゴリアテの胴鎧を蹴り飛ばす。


    ズザザザーッと地面を転がるゴリアテだが、ダメージは大してないだろう。


    その証拠にゴリアテは直ぐに立ち上がり俺に向けて大剣を構える。


    (何という腑抜けた剣だ!)


    黒霧が憤慨しているのも無理はない。


    殺気を消せと俺は言ったが戦意を消せとは言っていない。


    「殺気を消そうとして戦意が乗っていない剣など鈍らでしかないぞ」


    「……」


    「俺を倒すという強い意思をその馬鹿デカい剣に込めろ!」


    「殺気を消し、更に戦意を剣に込めるか……目から鱗が落ちる思いだ」


    再び目を瞑るゴリアテ。


    殺気は先ほどより漏れてくるが、それでも大剣に強い意志を感じる。


    ただ、それを所在なげに待つ俺の身にもなってくれ。


    (不器用な奴だ)


    (そういうのは嫌いじゃないのだろ?)


    (ふんっ!)


    黒霧はツンデレだ。まぁ、俺もゴリアテみたいな奴は憎めないのだがな。


    「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!」


    ゴリアテは気合の雄叫びを上げる。


    地面の土がバリバリと振動するほどの気合が俺にも伝わってくる。


    くるっ!ガンッ!


    ゴリアテの戦意がこもった重たい剣撃が地面を抉る。


    そして無理やり大剣を地面から引き抜き薙いだ後に袈裟懸けに振り下ろし、それらを俺が避けると突きを放ってきた。


    キーーッン。


    「やるじゃないか、良くなってきたぞ」


    俺は黒霧で大剣の軌道を変え、目の前にあるゴリアテの巨体に向かって言う。


    「まだまだ、フンッ!」


    剣を合わせ黒霧を押し込もうと圧力をかけてくるので俺は体重差によって後方に押し込まれる。靴が地面をズズズーと引きずる音が響く。


    「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!」


    暑苦しい雄叫びを上げて俺を訓練場の柵まで追い込もうとするゴリアテ。


    何故か顔がにやけてしまう。


    (自分の強みを生かした戦い方を知っているな)


    (さっきは怒っていたくせに)


    (五月蠅いぞ!)


    黒霧はこういう泥臭い奴は嫌いではないらしい。


    だが、俺だってこのまま追い込まれるわけにはいかないぞ。


    足に力を込める。ガッと死熊のブーツの靴底が地面をつかむ。


    「ぐっ!?」


    「もっと気合を込めろ」


    柵まで十数メートルというところまで押し込まれたが、俺だって力で負ける気はない。


    レベル差が二百五十もあるのに力負けするわけにはいかないのだ。


    「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!【剛腕】!」


    スキルの【剛腕】を発動させ『腕力』を一ランクアップさせたゴリアテの圧力が増す。


    だが、その程度のことは織り込み済みだ。


    ギリギリと大剣と黒霧がせめぎあう。


    俺は更に足に力を込めゴリアテを押し返す。


    「ぐぬぬぬぬっ!?」


    先ほどとは逆に俺がゴリアテを押し込む構図に見学している騎士たちからドヨメキが起こる。


    ゴリアテの足が地面にめり込む。


    地面を抉るほどの力が大剣と黒霧がクロスしている一点にかかる。


    大剣の剣身に黒霧が食い込む。


    訓練場の中央付近までゴリアテを押し返した俺は、フッと力を抜きゴリアテをいなし再び胴鎧を蹴り上げる。


    「グボッ!」


    数メートルほど浮き上がったゴリアテの巨体が落ちてくるところに再び蹴りを放つ。


    土煙を上げながら十数メートルほど吹き飛んだゴリアテ。


    左の脇腹を手で押さえながら大剣を杖代わりに立ち上がる。


    息が弾み額からは大粒の汗が滴り落ちる。


    あばら骨が数本折れたようだが、息を弾ませているのは俺と力比べをしたからで、汗もそのせいだろう。


    再び俺に向けて剣を構えるところを見るとまだやるつもりのようだ。


    「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」


    巨体を揺らしドスンドスンと地響きを上げ俺に切り込んでくる。


    それを数ミリメートルの差で躱す俺。そして大剣を止めることなく何度も何度も俺を捉えようと大剣を振るゴリアテ。


    無意識だろうが、この無謀とも思える剣撃の中の幾つかはこれまでで最高のひと振りとなり、最高を上書きしていく。


    獣人の性なのか、戦闘民族なのか、戦闘中に進化するようだ。これ訓練だけどね。


    「おおおおおおおおおっ!」


    ドッガーーーーン!


    今までの中で最高の剣撃が振るわれ、そこでゴリアテが地面に倒れ込む。


    限界を超えた動きを数分も続けていたのだ、無理もない。


    「団長っ!」


    騎士たちが駆け寄ってきてポーションを飲ませる。


    筋肉が断裂し折れたあばら骨が肺に刺さっていたが、何本ものポーションを飲ませ全身にかけることで治癒した。


    メッチャ動いていたが意外と命の危機だったのだ。


    ポーションで一命をとりとめたゴリアテだったが、ポーションは疲れまでは癒してくれないようだ。


    騎士が六人がかりでゴリアテを担ぎ訓練場のベンチに横たえると数分で意識を取り戻すゴリアテ。


    「自分の力不足を痛感した。スメラギ殿には感謝しかない」


    「最後のは良かったぞ」


    「本当か?」


    ゴリアテが寝ているベンチの横のベンチに座り訓練に戻った騎士たちを見つめながら頷く。


    目を瞑ったままだったが、俺が頷いたのが分かったのかその口に笑みを浮かべるゴリアテ。


    「で、俺の下で訓練するやつのリストはあるのか?」


    ゴリラのオッサンのデレた顔なんて見ていたくないから無理やり話を変えた。


    「……これだ」


    鎧の中から出した紙。今まで汗をかいていたゴリラ顔のオッサンの懐にあった紙……触りたくねぇ~。


    意を決しその紙を受け取り開いてみる。


    リストには三十人ほどの名前、職業、レベルの記載があった。


    中には騎士だけではなく魔法系職業の者もいた。


    「こいつらを集めてくれるか?」


    「騎士はすぐに集められるが魔法士の方は別の訓練場にいるので少し時間がかかるぞ」


    「構わん、全員ここに呼んでくれ」


    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


    三十人ほどの候補者から選び集められた十人の訓練生はこうだ。


    犬獣人で『闘槍士』のブルガ、熊獣人で『大盾騎士』のエーデル、猫獣人で『闘弓士』のシュバルツ、猿獣人で『隠密短剣士』のファルケン、人族で『治癒士』のアクラマカン、キツネ獣人で『魔導士』のジャマラン、花妖精族で『踊り子』のフリン、エルフで『精霊術師』のオブリ。


    八人しか選んでいない。残りの二人はゴリアテとロッテンだ。


    ゴリアテはともかく、ロッテンは良いのかと聞いたら「お館様にはご了承いただいている」と言うゴリアテ。


    このゴリラ君は見た目通り人情に篤いやつだったようだ。それに伯爵も意外と懐が深いな。


    しかしだ……全員男で花がないな……いや、花妖精族がいるけど男なんだよな。


    (心にオアシスがほしい)


    (カナンがいるではないか。それに今ではハンナも)


    (何言っているんだよ、カナンとハンナは奴隷だぞ。奴隷に手を出したら俺は鬼畜じゃないか!?)


    (犯罪奴隷のハンナであればハンナの意思は関係ないぞ。それに一般奴隷のカナンだってカナンが了承すれば問題ない。二人ともいけると思うがな)


    (ば~か、奴隷に手を出すほど俺は落ちぶれてはいないぞ)


    (そうか、私はどちらでも構わないがな。ははは)


    チラッとカナンを見るとカナンはニコリと笑顔を俺に向けてくれる。……癒されるな。
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