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21Novel > Kaiko Sareta Ankoku Heishi (30-dai) no Slow na Second Life > 300-299 Vezeria apologizes

300-299 Vezeria apologizes

    魔王軍四天王の一人『濁水』のベゼリア。


    俺が魔王軍を解雇された当時の四天王だ。


    グランバーザ様引退直後にて、四人全員が一斉交代するというなかなかない状況で成立した新チーム。


    その中の一人、水属性を司るあの男は他に比べて地味な印象であった気がする。


    中肉中背のオジサン体型。


    実際より年を取っているような見かけに、ゆったりとしたローブをまとっているからなおさら茫洋とした印象になる。


    見かけも派手ではなく、口数も少なかったので、他三人に比べればやはり印象は薄い。


    ベゼリア。


    だから声だけ聞いて俺が咄嗟に思い出せなかったのも仕方のないことなのだ。


    「この水はアイツの仕業か……!?」


    「だろうな。仮にも水の四天王だ。この戦場全体を水浸しにするくらいはできるだろう」


    けっこう広範囲だしな。


    足首までつかる程度のどうと言うことのない深度だが、それでも並の魔法使いがカバーできる面積を遥かに超えていた。


    「気をつけろダリエル……! 今回の作戦はアイツの立案だ……!?」


    「え? でもアイツ、ゼビアンテスやドロイエと同期の四天王だろう?」


    彼女ら同様、レーディを魔王様のところまで行かせてしまった責任取って四天王を辞職したんじゃないのか。


    「アイツだけクビにならなかったんだ……! そして今は正式な四天王筆頭に……!」


    「あらまあ」


    そんなことがありえるのか?


    また魔王様の気まぐれの匂いがする。


    「こりゃーーーーッ! ベゼリア!!」


    そこへ怒りの声を上げ、空から飛来してくるのはゼビアンテス。


    もしや、あれからずっと空を舞っていたのか!?


    「このゴタゴタはお前の仕業だったのかだわ! 一人だけ四天王に残留しやがって! 特別扱いされた上にわたくしのシマを荒らすなんて重罪なのだわ! 判決死刑! 食らえシルトケミサイルだわ!」


    「きゃあああああッ!? お姉さまああああッ!?」


    ゼビアンテスの女郎、抱きかかえていた女の子を飛翔の勢いで投げつけた!?


    ベゼリア目掛けて!


    鬼畜か!?


    あの勢い、あの軌道なら女の子はあやまたずベゼリアに激突し、痛いことになるだろう。


    しかし……。


    「ぎゃあああああッ!? ……あれ!?」


    女の子は空中を進むほどに速度を落としていき、最後には止まってしまった。


    ベゼリアまで届くことなく……。


    「ひゃああああッ!?」


    そして速度を失った以上は重力につかまり、地上へと落ちていく。


    広範囲水浸しになった地表にぶつかり、ボチャンと音を鳴らした。


    「……あれは粘縛結界……!?」


    というとベゼリアが得意とする水魔法で、空気の粘度を水のようにして抵抗を何倍にも高める魔法だったな。


    それのせいであの女の子は、途中で止まってしまったのか……!?


    「気をつけろダリエル……! ベゼリアの目的は、恐らくお前だ」


    「は!?」


    リゼートの助言に俺困惑。


    「目的が俺!? 一体何で!?」


    「わからん。……わからんがベゼリアは、ここ最近起きた色々なことについて、お前が鍵を握っていると思っているらしい。だからお前を探し求めていた……!」


    ミスリル鉱山を攻めたのも、ミスリル鉱山自体が目的ではなく俺を誘い出すための策。


    重要拠点を脅かされたら、防衛に出ざるを得ないからな。


    「親友のリゼートならともかく、アイツならまあそこまでしないと俺にたどり着けんか……!」


    そこまで親しい間柄でもないしな。


    そして、そのベゼリアから俺への呼びかけ。


    「やあやあ久しいねダリエルくん、一体何年ぶりだろうか?」


    このもって回ったような言い方。


    当時の思い出が段々蘇ってきた。


    「最後に会ったのはキミを解雇した時だったかな? でも元気そうで何よりだ。さすが最強四天王の懐刀と言われた偉才は、職を失った程度じゃビクともしないらしいね?」


    「クビにした当人が言うセリフじゃないな」


    そもそも今さら俺に何の用だ?


    こんな大軍を動かしてまで会いたいとは。


    「そうだねえ。……まずは謝罪をしておくべきかね?」


    「謝罪?」


    「キミを四天王補佐より解雇したこと。我々の間違いだったよ。ここに非を全面的に認め謝罪しよう。許してほしい」


    「……」


    ……何?


    予想外すぎる言葉が出てきたので、一瞬放心してしまった。


    思えば初めてじゃないか?


    魔王軍をクビにされたことで謝罪を貰ったのは。


    「しかし、言葉だけではキミも納得しがたいだろう。それだけ我々が行った仕打ちは理不尽なものであることだし、また時間も経っている。そこで行動でも謝意を示そうと思うが、どうだろう?」


    「行動?」


    コイツのすることはことごとくわけわからん。


    そもそも何を目的としているかがまったく謎だし、次の行動がいちいち予想つかない。


    「これだよ」


    「それ!? いや、そいつは……!?」


    それまで、丘の陰になって見えないところから、むんずと首根っこを掴まれて引っ張り出される人。


    ベゼリアが突き出すその人物は……。


    「リトゲス!?」


    商会長のリトゲスじゃないか!?


    まったくの偶然なのか、魔王軍の進攻と時を同じくしてミスリス鉱山を狙ってきたヤツが、何故ベゼリアに捕まっている!?


    「実のところ、私だけ軍より先んじてミスリル鉱山に到達していてね。しばらく隠れて様子を探っていたんだ」


    「何のために!?」


    「もちろんキミとの交渉の糸口を見つけるためにだよ? 少しでもキミに気に入ってもらう手を探そうと思ってね。そして見つけたのがこれだ」


    首根っこを捕まえられて、思うように動けぬ様子のリトゲス。


    「助けてええええッ!? 誰か助けてええええええッッ!!」


    商会の頂点に立って人間族の経済を制圧するリトゲスが、どうしようもない取り乱しようだった。


    非戦闘民であるアイツが敵に捕まれば、ああなるのは仕方ないが。


    「この男は、キミたちに随分敵対的なようじゃないか。しかしキミらも今は人間側、下手に動けば同族殺しの罪を負わされる」


    「……!?」


    これは、まさか……!?


    「おい待て……!?」


    「しかし異族である私にとっては関係のない話だ。むしろ魔族が人間族を手にかけるなど当然のこと。キミの目障りの種を代わって取り除き、キミへの誠意を示したい」


    「だから待てと言ってるだろう!!」


    しかしベゼリアは止まらない。


    小高い丘の上から勢いよくリトゲスを突き飛ばす。


    すると丘の縁を飛び越え、下へと転がり落ちる。


    「ふげえええええええッ!?」


    急斜面を転がるリトゲス。


    終着は俺たちと同じ目線の高さだった。


    ザパンと鳴る水音。


    今足元には広範囲で水が張ってあるので。


    「ぎゃああああッ! 水! 水冷たいいいいいいッ!? 助けてえええええッ!!」


    一時的にも魔族に捕まり、命の危険でパニックに陥っているリトゲス。


    とにかく慌てふためきながら助けを求めて右往左往する。


    そのたび地面に張った水が張ね、飛沫が上がる。


    「誰か! 誰でもいい助けろ! 助けてくれたら金を払う! 私は商会長だいくらでも出せるぞおおおおおッ!!」


    暴れるたびに舞い上がる水飛沫。


    ただ……、その飛沫が異様であることに気づいた。


    波打つ動きが、重い?


    普通の水よりも。まるで高い粘性を持つように。


    「……ッ!? まずい! 動くな!」


    この地表一面に張っている水はただの水じゃない!


    ベゼリアが魔法で発生させたものだとすれば……!?


    「むごおおおおおッ!? ごおおおおおおッ!?」


    やっぱり!


    この水は、通常の何倍もの粘性でもって浸かった者を拘束する『囚牢粘縛』の魔法だ!


    一見ただの水のように見えて、掻き混ぜれば混ぜるほど粘性を増してもがく者を捕える!


    最後には身動きできなくなるほどに!


    「動くなリトゲス! これは動くほどハマっていく罠だ!!」


    「うごごごごおおおおおおおおッ!?」


    しかし正常な判断力を失ったリトゲスは、逃げたい一心でもがき足掻くばかり。


    その手足が粘着液体に囚われていく。


    「くそッ! 『凄皇……!?」


    いやダメだ。


    『凄皇裂空』の超切断力ならどんな粘液だって断ち切れようが、リトゲス諸共両断してしまう。


    しかし他の手段を講じるには距離が開きすぎている。


    俺だって動けば粘度を増す水の中に足を沈めているんだ。


    走ればすぐさま囚われる。


    「助けて! 助けてえええええッ!!」


    そのうちにリトゲスは、粘度の極まった液体に顔まで囚われ、鼻口を塞がれる。


    呼吸ができない。


    それゆえさらに必死に足掻くもそれだけ粘度は増していき、動けなくなったリトゲスはやがて動くことすらなくなった。


    すると途端、魔法水は粘度を失い元の清水へと戻っていく。


    しかしリトゲスはもう動かない。


    人間族一の知謀を誇ったあの男は、世界一愚かな死に様を晒した。
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