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55-55 Gray Ghost

    「すまないが──リーンはそこで、見ていてくれ.


    あれはひとまず俺一人でやってみる.


    だが万が一……危なくなったら助けてくれ.


    頼りにしているからな」


    そう言うと先生は床を蹴り、あの目前に手足を広げる巨大な化物に向かって目にも留まらぬ速さで駆けていった.


    あの闇の中に浮かぶ、不気味な白い怪物.


    あれは一体──?


    それは私が見たことも聞いたこともない、未知の怪物だった.


    あんなものがこの王都の倉庫の地下にいるなんて、聞いたことがない.


    そう思いかけて、ふと、思い当たるものがあることに気がついた.


    ……読んだ(???)ことならあるかもしれない.


    「───あれは、まさか───」


    あの暗闇の中に浮かぶ白い巨体.


    身体中に眼玉が出現し、その四肢は何処までも分裂し、長く伸びて触手のように相手を襲う.


    そんな特徴を持つ存在は多くない.


    「───【灰色の亡霊(ファントムグレイ)】」


    クレイス王国の迷宮探索の長い歴史を記す古い文献に【大災害級】として記述され、白い巨体が闇と混ざり合い『灰色』に見えることからそう呼ばれたという伝説的な怪物、【灰色の亡霊(ファントムグレイ)】.


    それは数百年前に突然、迷宮の奥深くから姿を現し、瞬く間に千に及ぶ人間を死に至らしめたという.


    その為、当時の有力冒険者達が一丸となって討伐に当たったが、それでも倒しきることが適(かな)わず、【僧侶】系の【職業(クラス)】を持つ聖職者の大部隊を編成し、多数の犠牲を出しながら何とか地中深くに封じることに成功したという、規格外の『異名付き(ネームド)』モンスター.


    その甚大な被害をもたらした魔物は、精鋭たちの命がけの行動によって何重にも結界で強化が施された『迷宮遺物』の祭壇に押し込まれ、以後誰も触れることがないよう『還らずの迷宮』奥深くに安置され、そこに至る入り口は全て封じられ禁足地となったと言う.


    今、あの闇の向こうに見える巨大な祭壇.


    あそこに刻まれた魔法紋には見覚えがある.


    死霊系の魔物に対して強力な封印を施す『結界術』の一種だ.


    そう、おそらく────間違いない.


    あれが歴史書の伝える逸話に登場する迷宮遺物の祭壇なのだろう.


    でも、あの祭壇に刻まれた魔法紋はところどころ崩れ、祭壇自体も壊れているように見える.


    皇国の襲撃の衝撃で一部が壊されたのかもしれない.


    ふと違和感を感じて暗闇に目を凝らすと、その壊れた祭壇の周囲に淡く漂う『幽霊(ゴースト)』の姿が見えた.


    それは導かれるように【灰色の亡霊(ファントムグレイ)】の体に吸い込まれ、その一部となっていった.


    「────こういう、ことだったんですか」


    それを見て私は納得した.


    ここ最近、急激に増えた『幽霊』の出没報告.


    その確たる原因は分からず、きっと迷宮に関することだろう、と曖昧なままだった.


    でも、おそらく.


    あれ(??)が、それら全てを呼び寄せていたのだ.


    《────────おおおおおおおおおオオおおおおオオおおおおオおおおおおおおオオおおおおオオおおおおおおおおおおオオおおおおおおおオオおおおおおおおおおおオオおおおおオオおおおおオオおおおおオおおおおおおおオオおおおおオオおおおおおおおおおおオオおおおおおおおオオおおおおオオおおおおオオおオオおおお────》


    その魂を鷲掴みにするような恐ろしい叫び声を聞くたびに、私は恐怖で一歩も動けなくなった.


    体の奥底から沸き起こる、根源的な恐怖.


    勇気を振り絞り、振り払おうとしても抗えない.


    でも、先生はとても落ち着いた様子で、【灰色の亡霊(ファントムグレイ)】の攻撃を躱している.


    先ほどの言葉からも、まるで、最初からこのような怪物がここにいる、と分かっていたかのように思える.


    ────まさか、ノール先生は最初から、これの存在を──?


    よくよく思い返してみると、そうとしか思えない.


    ノール先生ほどの強者が私に「幽霊退治に行きたいから、ついて来て欲しい」などと、少しおかしいとは思っていた.


    それに、先生は「きっといい訓練になると思う」とも.


    そう言えば、ここに辿り着いたのも先生が不注意で罠を踏み抜いたようにも見えたが……ダンジョンに入って最初の一歩目で罠を踏み抜くなど、余程勘の悪い素人でもなかなか出来ないことだろう. まして、あのノール先生がそんなことをするとはとても考えにくい.


    そう、つまり、先生は鋭敏な知覚で地下に違和感を感じた為、敢えて床が崩落するような大掛かりな罠を踏み抜いた……そう考えるのが自然だ.


    となるとやはり、先生は最初からあれ(??)と戦うのが目的で──?


    でも────


    《──────おおおおおオオおおおおおおおオオおおおおオオおおおおおオオおおおおおおおおおおおおオオおおおおおおおオオおおおおオオおおおおオオおおおおオオおおおおおおオおおおおオオおおおおオおおおおおおおオオおおおおオオおおおおおおおおおおオオおおおおおおおオオおおおおオオおおおおオオおオオおおお────》


    あれ(??)はあまりにも、強大すぎる.


    文献の記述によると【灰色の亡霊(ファントムグレイ)】には実体を持つ武器が一切効かない.


    だというのに、こちらが少しでも触れれば、たちどころに生命を奪われてしまう.


    数十人規模の熟練冒険者で構成される『大討伐部隊(レイドクラン)』が悉く全滅させられた後、【恐怖の象徴】とまで言われるようになったとてつもない怪物.


    ────接触は即ち、死.


    なんの対策もなしに勝てる相手ではない.


    間違っても、たった二人で立ち向かうような存在ではないのだ.


    でも.


    闇の中で蠢く無数の腕とも脚とも触手ともつかない不気味なものが、瞬く間に形を変えながら襲いかかるのを、先生はそのほんの僅かな隙間を縫いながら見事に躱していく.


    あの猛攻にたった一人で一歩も退かず、躱しきれなくなるほどに攻撃が激しくなっても、迷宮遺物『黒い剣』を使って白い触手を全て弾いていく.


    そうか、先生にはあれがあったんだ.


    かつてクレイス王(お父様)が仲間と共に深層から持ち帰ったあの超級遺物が.


    私が少し冷静さを取り戻し見守る中、ノール先生はそのまま全ての攻撃をなんでもないことかのように片手の剣で弾き返し、ゆっくりと歩いてあの白く蠢く【灰色の亡霊(ファントムグレイ)】へと近づいていく.


    「────凄い」


    それ以外の言葉は出てこなかった.


    あの人は私の想像すら遠く及ばない世界にいるのだと、思わずにはいられなかった.


    最初から私の心配など無用のものだったのだ.


    そうして安堵しかけた私は、先生の手元に五つ(??)の火が灯っているのを目にし、自分の目を疑った.


    「────あれは、【五重詠唱《クィントゥプルキャスト》】────?


    でも、そんな────まさか、そんなことが」


    それは【魔術師】の奥義【多重詠唱(マルチキャスト)】の到達点──片手で五つの魔法を発現させるという【五重詠唱《クィントゥプルキャスト》】だった.


    オーケン先生が見せてくれた前人未到の最高奥義.


    でも同時に、それだけではないことにも気が付いた.


    先生の指先に灯された【プチファイア】.


    その全てが、以前先生が私に見せてくれたような強度で【過剰詠唱(オーバーキャスト)】されているのだ.


    いったい、どうやったら、そんなことが……?


    もはや、想像を超えているという次元ではない.


    あれは、もう、なんと言えばいいのか.


    ……言葉にすら、ならない.


    私がそんな愕然とした想いで先生の姿を追っていると、更に途方に暮れる光景を目にすることになった.


    「────────嘘、ですよね……?」


    先生は手にした『黒い剣』で白い触手を弾きながら、もう片方の手で【過剰詠唱(オーバーキャスト)】された【五重詠唱《クィントゥプルキャスト》】の【プチファイア】を手の中に集約し、瞬く間に一つに束ねていく.


    すると手の中に灯った小さな火が一層眩しく輝き出した.


    ────あれは. まさか.


    「…………【魔法融合(フュージョンマジック)】…………!」


    それもオーケン先生が百年を超える長い研鑽の果てに辿り着いた至高の技術.


    二つの魔法の発動を寸分の違いなく重ね合わせると、飛躍的に互いの威力が増す──その理論は昔からあったが、実現には恐ろしいほどの魔力制御の精度を要求され、体現できた者はオーケン先生しかいないとされる.


    しかも、それはあくまで一つの魔法と一つの魔法を重ね合わせるという技術だったはずだ.


    ……なのにノール先生は今、一度に五つ(??)を『融合』させているのだ.


    それを体現するのに、どれ程の研鑽を必要とするのか、私では想像もつかない.


    途方もないことが今、目前で繰り広げられている.


    私が軽い眩暈を憶えているうちに、先生は手のひらを敵に向けた.


    「【プチファイア】」


    瞬間、轟音を伴う閃光と共に【灰色の亡霊(ファントムグレイ)】の身体が爆散した.


    ──そう、あれは【プチファイア】だ.


    元は指先に火を灯すだけの、最下級の魔法スキル.


    それが信じられないほどの威力に高められている.


    あっという間に再生する【灰色の亡霊(ファントムグレイ)】を前にして、先生は落ち着いて『黒い剣』を投げつけ、行動の自由を奪い、一瞬で間合いを詰めた.


    その両手にはそれぞれ、【五重詠唱《クィントゥプルキャスト》】された【プチファイア】.


    先生はそれを当然のように手の中に集約し、それを重ね合わせ──再び【灰色の亡霊(ファントムグレイ)】に放った.


    ────闇を振り払う灼熱の閃光と、地を揺らす轟音.


    巨大な空洞を覆うほどだった巨体と背後の祭壇が一瞬にして蒸発し、周囲の壁や床も大きく抉られた.


    それは想像すら及ばないほどの高みだった.


    私の【多重詠唱(マルチキャスト)】の限界が、両手合わせてやっと『六』.


    賢者と讃えられ【九魔】の異名を持つオーケン先生でさえ『九』.


    それを先生は同時に『十』の魔法を詠唱し、しかも、全てを【過剰詠唱(オーバーキャスト)】すると同時に、全てを一点に『融合』させ、一斉に放ったのだ.


    ────恐ろしいほどの研鑽.


    ────それに見合う、途轍もない威力.


    もしこれで、倒せない相手がいるとしたら、もうどんな手段でも対抗はできないだろう.


    私など、いつになったらその水準(レベル)に至れるのか想像もつかない.


    オーケン先生ですら、あの領域の魔法を行使するのは至難の業だろう.


    それはそれ程に凄まじいものだった.


    あれほどの一撃を受ければ如何に伝説上の怪物でもひとたまりもない──絶対に倒せている筈.


    そんな風に思わずにはいられない一撃だった.


    むしろ、そうであって欲しいと願っていた.


    あれでどうにか出来なければ私はもう、どうしていいかわからなかったから.


    ────なのに.


    それなのに.


    《────────おおおおおおおおおオオおおおおおおおオオおおおおオオおおおおおおおおオオおおおおおおおおおおおおオオおおおおおおおオオおおおおオオおおおおオオおおおおオオおおおおおおおおおおおおおオおおおおおオオおおおおおおおオオおおおおオオおおおおオおおおおおおおオオおおおおオオおおおおおおおおおおオオおおおおおおおオオおおおおオオおおおおオオおオオおおお────》


    再び、暗闇の中にあの恐ろしい声が響いた.


    先生のあれだけ強烈な魔法攻撃を受けながら、【灰色の亡霊(ファントムグレイ)】は殆ど時間をおかずに復活した.


    It was all intact.


    ──── despair.


    That''s the word that popped into my head when I saw that creepy white thing that had grown a size or two.


    It''s much bigger than before.


    It''s clearly getting stronger.


    I can''t even damage it.


    How am I supposed to defeat something like that?


    Again, my body stiffens in fear.


    But the teacher looks on and keeps a cool face.


    I guess it didn''t work.


    On the contrary, he looks somewhat relieved and satisfied, as if he has done everything.


    I wonder how you can be so complacent. But it''s not as if he''s given up.


    ──── Yes.


    The person standing right beside me right now is none other than Dr. ...... Noor.


    I''m sure he has some kind of special trick up his sleeve that I haven''t thought of yet.


    So I looked into his face with anticipation, and he smiled quietly.


    The gentle smile eased my tension and I smiled back.


    Then he said to me, relieved.


    "Now, I''ll leave you to it, Leanne.


    ............ What?
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